トリチウム水の海洋放出を憂慮する市民有志による第２６回参議院議員選挙　宮城選挙区候補者に対する公開質問状の趣旨に賛同致します。 ご参考までに、原子力規制庁に対する２０２２年５月１７日発のパブコメ募集へ応募した意見書を添付致します。 　　　　　　　ー◇－ 「東京電力ホールディングス株式会社　福島第一原子力発電所特定原子力施設に係る実施計画の変更認可申請(ＡＬＰＳ処理水の海洋放出関連設備の設置等）に係る審査書」に対して、海洋放出計画自体を認めない立場からコメントします。 １．パブリックコメント募集では、海洋投棄の是非という根本問題への意見も求めるべきである。 今回は科学的・技術的な面でのコメントだけを求めているようであるが、処理経過中の汚染水の海洋投棄は認められない、という立場からコメントするのを排除しているように読み取れる。 これに関して、２０２２年２月　東京電力福島第一原子力発電所におけるALPS処理水の処分の安全性に関するIAEAレビューにおいてIAEAは、４６ページ１３行目で「放出の許認可を得るプロセスでは、規制機関、申請者、その他利害関係者との間で情報の交換が必要になる可能性がある。利害関係者の中には、他国、特に近隣国に所在する者もいる可能性がある。」と述べており、更に同４７ページ１行目では「しかし、ALPS処理水の取り扱いにも関連しているリスク低減や廃炉の最適化など、より微妙な概念は、一般公衆にはまだ広く理解されていない。」とも述べていて、日本政府が進めている海洋投棄方式は、決して広く理解されている訳ではない、と述べており、課題は海洋投棄方法の科学的・技術的問題だけに限局したものではないことを暗に認めていると思われる。 しかし、審査書内容は極めて専門的且つ膨大であって、一般公衆がコメントできる水準のものではないにもかかわらず、科学的・技術的コメントに限るとしたこの度のパブリックコメント募集方法は、海洋投棄に反対する一般大衆の意見を切り捨てて、海洋投棄を前提とする意見の妥当性をオーソライズしようという意図があるように見えてしまう。 ２．先ずは、“低濃度トリチウム水”が絶対に安全であるというエビデンスを示すべきである。 申請書および審査書では、放出水中のトリチウムの濃度を１，５００ベクレル／Ｌ以下とする、としているが、これが全ての生命体に対して、あらゆる意味で、未来永劫絶対に安全であるという科学的エビデンスは示されていない。 一方、トリチウムによると推定される健康障害例が世界各地で報告されており、生体に及ぼすトリチウムの傷害作用についても多方面から言及されている。 このように、トリチウムの健康影響に関する知見が増えつつある中でなおかつ海洋投棄を決定するのであれば、東電と原子力規制庁は、その安全性を担保するエビデンスを予め国民に明示しておく責任がある。 ３．迂回投棄の理由を明示すべきである。 １～４号機前の海に投棄するのでなく、わざわざ５～６号機前に海底坑道を設けて海岸から１ｋｍも沖合に放出する、という設計（計画）にした理由が説明されていない。 これは洋上投棄を規制するロンドン条約違反を回避する為の弥縫策であるという嫌疑がかけられる可能性があると考えるがどうか。 ４．その他―IAEAはいくつかの懸念を示している。 　　原子力利用の規制機関とは言えないIAEAですら、東京電力と原子力規制庁への聞き取りの中でいくつかの懸念を示しているように読み取れる。 国際規制基準の遵守というレベルですら懸念がもたれている東電の申請書をそのまま受理することには大きな疑問を感ずるし、これまでの東電のやり方を見てきた者としてはこれが数十年に亘って計画通り正確に実施され、すべての情報が遺漏なく報告されると信ずることは到底できない。 結局総合的に判断して、私は海洋投棄計画自体を認めることはできず、汚染水処理方法をはじめから見直すことを強く求めるものである。 以上。